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  3. 角層を巡る水が肌の美しさを決める!

日本人が使っているスキンケア製品で、圧倒的に多いのが化粧水です。あるデータによると日本女性の9割以上が使用するアイテムであるとも。対する欧米では、化粧水は主にクレンジングクリームの後に使うためのふき取り用であることが多く、保湿やエイジングケアに欠かせないのはむしろクリームという位置づけ。海外に出るとよく日本人は実年齢よりも若く見られるといいますが、その秘密はこの化粧水を使う習慣にあるのではないか、と最近考えるようになりました。

日本の化粧水は保湿を目的としたものが大半で、その働きは肌の最表層、角層にうるおいを届けることです。顔の肌の角層は0.02mm程度の薄さといわれ、10層前後が積み重なってできています。外部からの刺激が肌内部に入り込まないようにし、また肌内部の水分が蒸散するのを防ぐバリアの役割を果たしているのです。

ここで質問。化粧水をチャチャッと手早く肌につけた場合、10層あるうちの何層ぐらいがうるおっていると思いますか? 何といっても角層はたった0.02mmの薄さですから、全部に行き渡っているはずだと思いますよね? 

ですが、バリア機能を突破してうるおい成分を届けるのは思うほど簡単なことではなく(もし簡単にバリア機能が破られてしまったら、色つき入浴剤を入れたお風呂で肌が染まってしまいます)、せいぜい角層の最表層から数えて2~3層程度といわれているのです。化粧水でうるおわせることのできる角層の上部や、角層の下の表皮の水分に触れてうるおっている下部の角層はともかく、その間の何層かの角層細胞までを十二分にうるおわせること。これが今の化粧水の研究で、取り組まれている課題です。

なぜそこまで、角層というたった0.02㎜のエリアのうるおいが大切なのかというと、肌の見た目に驚くほど直結しているからです。角層細胞が水分で満たされていれば、乾いた紙が濡れたときのように奥まで透けて、透明感がアップします。また、濡れた紙はくしゃくしゃにしても、乾いた紙のようにしわくちゃにはなりづらいですよね。

つまり、角層がうるおっていればシワになりづらいということです。角層細胞を食品保存用のビニールパックに見立てると、それが水分でパンパンに膨らんでいれば、かさが出てハリ感が生まれます。そう、たった0.02mmの角層を巡る水分が、透明感、うるおい感、ハリ感という肌の美しさを決めるカギを握っているのです。

角層をうるおわせることは、肌の入れ替わりを待つより効果実感が早いのもうれしいポイントです。角層は、ターンオーバーと呼ばれる肌が生まれ変わるサイクルが、表皮と合わせて約28日間(大人になればなるほどこの期間は伸びます)。ハリの元である真皮のコラーゲンやエラスチンが分解されつつ新たに作られるのに3~6ヶ月を要し、完全に入れ替わるのに6~7年程度かかることを考えると、ずっと早いのです。

実は私も取材でこうした事実を知るまでは「化粧水なんてどうせただの水分でしょ。結局は蒸発してしまうし、それなら美容液やクリームでのお手入れをした方がいい」と化粧水を軽んじる傾向にありました。

が、この事実を知ってからは化粧水を丁寧に、丁寧に肌に入れ込むように使うようになりました。もちろん、水分の蒸散をできるだけ遅らせるように、クリームでシールドすることも忘れません。それこそ若い頃は肌内部にある水分で、角層細胞全体をうるおわせることが可能だったから乾燥なんて感じなかったのだと思うと、毎日の水分補給は保湿ケアとしての重要性も帯びてきました。

特別な美容液やクリームに頼る前に、普段の化粧水をいつもより少しだけ丁寧につけてみる。それって、誰にでも簡単にできるエイジングケアだと思いませんか?

著者プロフィール

平 輝乃(たいら・てるの) : ビューティエディター・ライター

取材歴20年以上のビューティエディター・ライターとして女性誌を中心に活動。
美しい誌面・ビジュアル作りを得意とする一方、関西人の視点を生かしたユニークな切り口の面白い美容記事の制作にも定評あり。

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